京都府は社会的要請として、沿岸漂砂を制御し、海岸保全および異境保全を図る方向に積極的な対応を迫られた。京都府は1976年以降も現地調査を継続し、侵食状況および汀線形状の変化を追跡した。その洞査研究を踏まえて、京都府と連輸省は1979年より天橋立海岸を太らせて、元の姿に近い広い砂浜を造成するための対策を開始した。対策として、突堤工をそのまま活用した養浜を実施した。養浜工は、1980年から1985年にかけて実施し、約78,000m3の砂を投入した。その結果、図-2の下段にみられるように、汀線が10〜30m前進した。さらに、大突堤上手側ではその先端まで堆砂が進行すると共に、追跡調査により大天橋全体において漂砂の連続性を推定するにいたった。
一方、沿岸漂砂の供給確保の観点から、日置および江尻の両港湾施設によって堰き止められた漂砂を天橋立海岸にバイパスするサンドパイパス工法の導入検討に着手した。
3. 天橋立海岸におけるサンドバイパス事業
3-1. サンドパイパス工法導入の必要性と適正評価
京都府は、図-3に示すフローに基づき、1979年から1985年にかけて当海岸におけるサンドバイパス工法の適応性を検討するとともに、汀線形状予測を日的としたシミュレーションモデルの研究を行った。さらに、現地では試験工事を実施し、1981年から投入砂の追跡および汀線形状変化の追跡を行った。追跡調査の結果、以下のことが明らかとなった。一つは、突堤による漂砂捕捉機能である。養浜等の漂砂供給があると、突堤上手側の汀線は入射波向と直交するように前進する。そして、汀線が突堤先端に達しない限り下手海浜への漂砂移動はほとんど存在しないことが示された。(図-4)もう一つは、海浜地形の変動特性である。投入地点の海浜断面形状は、かなりの速度で従来の海浜勾配に移行し、汀線はその海浜勾配を保ちながら前進または後退する。さらに、底質移動はほとんど水深2m以浅で起こること等が明らかになった。(図-5)
これらの漂砂と海浜変形特性に基づいてサンドバイパス工法の適用方法を検討した。ここではまず、次の2つの項目に主眼を置いた。一つは、汀線形状と突堤内貯砂容量との関係を含めた漂砂機構全般のモデル化である。
モデル化の際に用いる漂砂則は、現地試験結果から波浪エネルギーフラックスと漂砂量と関係式を導き、それを使用した。もう一つは、求めた汀線変化モデルを用いた数値計算によるサンドパイパス工法を適用した場合の汀線形状の変動予測である。数値計算では、砂の投入位置、投入量および投入頻度の組合せを任意に設定して行い、サンドバイバス工法の適用性を検討した。
検討案は、バイパス砂量と突堤長を数案変えた条件で汀線変化の予測計算を行い、現実性、景観、周辺環境への影響等を尺度として評価を行った。その結果、サンド
Fig.3 the progress of the shore protection project against coastal erosion on the Amanohashidate Coast
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